夏休み読書記録 その5


『キャラクター小説の作り方』/ 大塚英治 著(講談社現代新書)

 東浩紀氏が『動物化するポストモダン ーオタクから見た日本社会ー』(講談社現代新書)において言及した「データベース型消費社会」というのは、意外や身近に、しかもかなり昔からあるものなのだ、と気付けます(ちなみに、本書中でも東氏の理論に触れられています)。たとえば手塚治虫は、マンガ表現はいくつかのパターンに過ぎないと考えていて、実際にそのように作品作りが行われていた、など。
 また、純粋にキャラクター小説が作りたい人も、あるいは他の創作活動がしたい人も、参考にできるでしょう。ウケるパターン(東氏の言う『萌え要素』)を組み合わせ、お約束のお話パターンに載せることで簡単にキャラクター小説はできてしまう、というのですが、これは音楽でも絵画でも写真でも、実は何でも同じなのではないでしょうか。また、肝腎なのはそれらを「いかに」組み合わせるかである、といったことも、創作に役立ちそうですし、現にサンプリングを多用する音楽などではそれが行われているような気がします。オリジナリティとはただ何もないところから立ち現れてくるものではなく、先達の業績を学び、真似ることの中で、その組み合わせ方などが作り出すものなのだ、というくだりは、単純なオリジナリティ信奉者に真っ向からNoを言うだけではなく、現代における創作というものの本質をある意味で突いているのではないでしょうか。

 ※これは面白かった! 面白かったんですぐ人に貸しちゃって、今は手許にないのが残念だけど、おたく論に興味がある人も、単純に本当にキャラクター小説を書きたい人も、それぞれにそれぞれの感性で楽しめると思う。侮り難し、講談社現代新書!

Posted: 金 - 10月 17, 2003 at 07:26 åflå„        


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