夏休み読書記録 その3


『心はどこへ行こうとしているか』/ 大沢眞幸・町澤静雄・香山リカ 著

 宿題としてはちょっと反則かもしれませんが、これは5年前に読んだものを再読しました。理由は簡単。大沢氏の他の書物を最近いくつか読んでみて、改めて98年という、オウム、エヴァンゲリオン、酒鬼薔薇聖斗、キレる17歳...という流れの只中にあった時期に、一体彼が何を感じ、言っていたか、確かめたくなったのです。
 有名な話ですが、あるニュース番組で、大勢の識者達を前に中学生が「なぜ人を殺してはいけないんですか?」と問い、識者達は誰も正面からこの問いに答えられませんでした。本書はまずここから始まります。いやしかし、なぜ人を殺してはいけないんでしょう。色んな答えが思い浮かびます。でも、説得的で普遍的な答えというのは、正直自分の口からは出てきません。悔しいけど事実です。昔なら当たり前で疑問にすらならなかった事が、今では素朴な疑問として現にそこに、あるのです。
 多発する凶悪な少年犯罪などを見るにつけ(ちなみに少年犯罪が増加している、というのは間違いで、数自体は減少傾向です。敢えて言えばその凶悪さ、残忍さがかつての比ではないものが増えている。問題とすべきはなぜそのような傾向にあるのか、ということで、さらに言えば我々はこの傾向が今後も続くだろう、と漠然と受け入れてしまっているようなところがある、ということではないでしょうか)、暗い気持ちになることが多い昨今ですが、社会的背景を正しく認識し、考え、なんとか少しでも今後に繋げていくことが私たちが担っている責任だろうと思います。

 ※人は相手の目を見ると殺せないという。だから顔を見えないようにして殺した、とある殺人者は記している。でも先般起こった小学生殺人事件容疑者の少年は、わざわざ声をかけて振り向かせておいて、ビルの屋上から突き落としたという。本当に、本当に、何が変わったんだろう? 何が起こってしまったんだろう?

Posted: 金 - 10月 17, 2003 at 07:13 åflå„        


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