夏休み読書記録 その2


『自由を考える[9・11以降の現代思想]』/ 東浩紀・大沢眞幸 著(NHKブックス)

 サブタイトルにもあるように、「9・11」、つまり2001年9月11日のNY同時多発テロ事件を1つの起点として、いま一度「自由」について考えましょう、という本。
 両氏は「大きな物語の消失(東氏)」「第三者の審級の失墜(大澤氏)」という別々の言葉を用いながら、同じ事を言っています。かつて我々の社会を司っていた秩序(=大きな物語、第三者の審級)は既にその効力を失い、かわりに小さな物語(オリジナルではない、シミュラークル(←フランス語!))だけがある、ということです。有り体に言えば、よく言われる倫理の再構築だとかは有効ではあり得ない、ということです。おそらく私たちやそれより若い年代の人たちには直観的に理解できることだろうと思いますが、逆に言えば、これほどの知性を持った人々がいま改めてこれを言わねばならないくらいに、若い世代の感覚と、実際に社会を動かす世代との感覚が決定的にずれてしまっているということなのかもしれません。

 ※本当に、シミュラークルばかりがある世界観というのは、若い人たちと話していると凄く感じる。たとえばテレビのコントなんかでも、昔のお笑いがあって、それへのオマージュになっているんだよ、とか、音楽を聴いていて、あ、これは○○の引用なんだな、とか、そういうのがない。知識や経験がないから仕方がないのか? 否。そもそもそういうモードがないみたい。ハリウッド映画とマクドナルドの価値観は、僕が思っている以上に浸透しているのかもしれない。

Posted: 金 - 10月 17, 2003 at 07:12 åflå„        


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